December 1st, 2020
Animazeがリリースされてから半月程が経った。 リリース直後に試した使用感としては「トラッキング精度の明確な向上、もたつきの軽減、シンプルなデザイン」といったもので、一定の不安定さはあるものの切り替えができるのであれば望ましい選択肢であるという立場を持っていた。詳細はこの記事。一方でSteamの評価を見てみると346件のうち高評価は40%を切っており、中々厳しい展開になっていると言える。
このような状況になっている理由として自分は「FaceRigの競合化」、「早期アクセスの期待値の上昇」、そして「有料化のリスク」だ。
facerigの強みは「膨大なドキュメント」にある。2020年現在、iPhoneを用いた顔認識等でfacerigの顔認識が一強なわけではない。それでもfacerigを使う人が少なくない理由は「安定性がある」、そして「facerigで事足りてしまう」からだと考えている。その人達が安定しているfacerigからまだドキュメントが少ないAnimazeにわざわざ移行するだろうか?
これは以前自分がAnimazeのリリース前に書いた予想だ。FaceRigからのスムーズな(モデルデータをそのまま読み込めるくらいの)移行ができなければ、FaceRigは競合になりうると危惧していた。結果としてTwitterではFaceRigのままでしばらくは良いと判断する者、それを見てAnimazeをやめる者が少なくない数見受けられる。
またFaceRigの次作ということもあり、「FaceRigの安定性はそのままで更に画期的な改善がされているであろう」と期待値を高くしてしまったユーザーも少なくないように思える。開発側からすれば「5年間運用してきたソフトの安定性を求められても…」という気持ちになる気がするが、使う側からするとやはり期待値は高くなってしまう。
元々Animazeは早期アクセスとしてソフトをリリースした。不安定性やユーザーの声を柔軟に取り入れたいという意向からの選択なのだろうが、残念ながら早期アクセスでも安定性が求められるようになっている。このソフトウェアが"不完全である"ことを皆が認識しているが、早期アクセスとしてリリースしていても"不完全である"ことは望んでいない。
事業を継続する上でお金を頂くということは必要不可欠であるが、その上でまだ早期である時にどのようにお金を調達するか、というのは難しい部分だ。「以前成功したソフトのリニューアルであり、買い切りではない」場合は特に。
今回自分が特に問題だと思った部分は「一回ごとのインポート単位の課金」だ。まだ安定したインポート方法のドキュメントが揃っていないタイミングでこれを導入してしまうと、「取り敢えず試してみた」層が失敗した際に体験として残るのは「インポートに失敗した挙句課金はされてしまった」というものだ。その人のインポート方法があっていたか否かは論点ではなく、結果として「お金が消えた」という感覚が残る、という話である。
この一連の低評価の騒ぎはVTuberで生計を立てたい人が続出し、多数のクオリティの高いソフトがしのぎを削っている現状、そしてFaceRig開発が新しく出すと大々的に出していたのもあり相当期待値が高くなっていたことの反動ではないかと考えている。
また買い切り型にするのではなく、不完全なものをサブスクリプション型にするには民間の理解が追いついていないのかもしれない。様々なプラットフォームでの反応を見る中で「さらっと記事や動画を見て、なんとなくで都度課金のインポートをしようとしたがうまくいかなかった」という声が一定数あった。これはFaceRig開発がカジュアルな層にもきちんと製品の良さを伝えられていたということなのだが、一方でAnimazeは設計面でもカジュアル向けの展開をもう少し考えていたらもっと安定した評価になったのではないか、とも感じてしまった。
「リリース直後で安定性がわからないので都度課金はあまりしない方がよさそうかな」と全員が慎重な考えになるのが理想的なのだが、絶対数が多いと様々な考えな人が来る。Animazeに関わらず「ユーザーがどの程度の知識を持っていて、どんな行動をするのか」という問題についてはもっと重要な懸念点として考えるべきなのかもしれない。